現地コラム
COLUMN
西表島-新城島-
目次
別名「パナリ島」こと新城島
みなさまは、新城島をご存知でしょうか。
「しんじょうじま」ではなく、「あらぐすくじま」と読むのが正解です。
しかし、正式には新城島という島はどこにもありません。
「新城島」という地名は、「上地島」と「下地島」という隣接した二つの島の総称なのです。
さらに、この新城島には「パナリ島」という別名もあります。
実はこの新城島、多くの謎を持った神秘の島として知られているのです。
沖縄県の離島には人気の観光地がいくつもありますが、新城島はそんな中でも特殊な島だと言えます。
そこで今回は、ミステリアスな魅力を秘めた新城島について、ご紹介させていただきます。
二つの島から成る新城島
上地島と下地島の二島から成る新城島は、那覇市がある沖縄本島よりもさらに南西に400km以上の場所に位置しています。
観光地として人気の石垣島、雄大な自然で知られる西表島などと同じ、八重山諸島に属しており、亜熱帯海洋性気候であることから非常に温暖な環境です。
パナリ島とは、現地の言葉で「離れ島」を意味します。
では、次に上地島と下地島の特徴を見ていきましょう。
島民主催のツアーで上陸可能 上地島
二つの島のうち北側に位置する上地島は有人島ですが、島民の多くは近くの石垣島へと移り住んでいます。
かつては多くの人々が暮らしていた島ですが、現在では常住している人数は10人未満だそうです。
上地島は観光客を歓迎していますが、リゾート開発が進んだ島とは異なり、無秩序に行動されて島を荒らされることを望んでいません。
島内には聖域として立ち入りが禁じられている場所がいくつもあり、居住区である集落への観光客の無断立ち入りも、基本的に避けてほしいとされています。
そんな閉ざされた環境が守られている土地なので、基本的に島を訪れるためには島民主催のツアーに参加する必要があります。
来島のハードルが高いように思えるかもしれませんが、古来からのしきたりと島の人々の努力によって守られ続けてきた島内は静謐な空気で満ちています。
案内役の方に先導されて島内を歩いていくと、静かな集落や随所の光景は、現代社会においてはなかなか味わうことのできない神秘性で満たされています。
また、クイヌパナと呼ばれる高台や、タカニクと呼ばれる狼煙台などの史跡を見て回ることで、かつての琉球王国の残り香を感じることができるでしょう。
ほぼ入島不可能!秘境 下地島
二島のうち南側、もう一つの島である下地島は、まさに現代に残された秘境です。
下地島の登録上の住民は、なんと1人。
島全体が牧場になっており、その管理人の方が滞在しているものの常住していないため、実質的には無人島となっています。
上地島同様、最盛期には数百人の人々が暮らしていたそうなのですが、近隣の石垣島や西表島が発展するにつれて人口が流出したのです。
その結果、昭和38年を境に無人島になりました。
現在は島内に集落が存在せず、通常の新城島へのツアーに参加しても、こちらの島に上陸することはできません。
下地島に行きたい場合は、下地島の上陸に絞ったツアーへ参加する必要があり、そのツアーも常時行われているわけではありません。
もし、ツアーに参加することができれば、かつて人が暮らしていた痕跡が点在する不思議な島の光景を、目の当たりにすることができるでしょう。
二島の狭間 上地島下地島海峡
新城島の見所は、神秘性と史跡だけではありません。
「離れ島」の名前の通り、二つの島の間はおよそ420mの海峡で隔てられています。
この海峡には美しいサンゴ礁が群生しており、沖縄特有の青い海にたくさんのサンゴ礁が満ちた光景を目にすれば、言い知れない感動を味わうことができます。
この海峡には、かつてジュゴンが生息しており、ジュゴンは人魚と見間違えられたという話も伝わっているのです。
それを証明するかのように、新城島には人魚神社という神社が存在しています。
ただし、この人魚神社は聖地であり島外の方の立ち入りが禁じられているため、島を訪れた際は決して中へ踏み入れないよう留意しておきましょう。
現在ではジュゴンはいなくなってしまったとされていますが、2010年には付近の海で目撃されたという情報もあります。
もし、とても運が良ければ、ジュゴンの姿を目にすることができるかもしれません。
また、海峡に限らず新城島を囲んだ海は非常に透明度が高く、島を訪れるツアーはシュノーケリングなどのアクティビティとセットになっているものも多いです。
新城島を訪れる際は、島の文化だけでなく周辺の海にもしっかりと目を向けておきたいですね。
新城島(パナリ島)への行き方
神秘と自然に満ちた新城島に訪れてみたいと思っていただけたでしょうか?
しかし、新城島は通常の交通手段では辿り着くことができないのです。
高速フェリー便はない
八重山諸島には西表島や鳩間島などの観光で訪れることのできる離島がいくつも点在しており、それらの島々へは諸島の中心地である石垣島からフェリーで向かうことが基本です。
しかし、新城島へは石垣島からの高速フェリー便が出ていません。
ツアーに参加が必須!
では、新城島を訪れてみたいと思った時にはどうすれば良いのでしょう。
新城島に訪れるためには、石垣島や西表島から出ている新城島観光ツアーに参加する必要があります。
ツアーに参加すれば、通常は出ていない船をツアー会社が手配してくれるため、新城島へ辿り着くことが可能です。
別名であるパナリ島の名称でツアーが組まれていることも多いため、見落とさないようしっかりと調べて、各社のプランを見比べてみると良いでしょう。
まさに神の島 新城島観光
新城島は神の島と称されることもあるように、土地に根差した古くからの信仰や祭礼が残されています。
今は石垣島などに移り住んでしまったかつての住民たちも、祭りや儀式の時期を迎えると新城島へと帰ってくるのです。
7月の中頃に行われる豊年祭では、アカマタ・クロマタと呼ばれる仮面の神が信仰の対象となっています。
しかし、この祭りは新城島の出身者やその親族、近しい関係者などに限られており、さらには参加者が祭りの内容を口外することも禁じられており、実態の知れない秘祭となっているのです。
特例として参加できるツアーなども存在しないため、興味があるからといって不用意に調査することは避けましょう。
秘匿性が保たれていることも、新城島の大きな魅力の1つ。
訪れた際は、明かされることのない秘密に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。
個人で行くことは不可能
新城島には、個人で行くことは不可能です。
また、個人で断りなく訪れるようなことは、絶対に止めましょう。
現地の方とのトラブルになってしまう可能性もありますし、多くの方々の努力によって保たれている島のルールを崩すことに繋がりかねません。
新城島へ行く際は、必ず近隣の島からのツアーを利用しましょう。
ツアーは早めの予約が必須
そんな新城島へのツアーですが、参加を検討している際はできるだけ早めに予約を入れておきましょう。
定期便が通っていないイレギュラーな航路であるため、余裕のあるスケジュールを組むようにしたいですね。
上地島・下地島を歩いて行き来することができる!?
上地島と下地島について、海で隔てられているとご紹介させていただきましたが、なんとこの二島は、時間帯によってサンゴ礁の浅瀬を歩いて渡ることが可能なのです。
また、二つの島の間はサンゴが白化しておらず、色鮮やかな光景を目にすることもできるでしょう。
まとめ
今回は、神の島こと「新城島」についてご紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。
新城島は南国旅情を味わえるのはもちろんのこと、歴史に関心がある方やミステリースポットに興味のある方など、幅広い人々に楽しんでいただける幅広い魅力を持った島です。
島を訪れる際は、ルールを守って礼儀正しく楽しむことを心がけましょう!