現地コラム
COLUMN
西表島の基本情報
目次
西表島を含む八重山諸島について
沖縄県といわれて多くの方が思い浮かべるのは、那覇市のある沖縄本島ではないかと思います。
しかし、沖縄県は数多くの島々で構成されており、観光地として沖縄本島に負けず劣らずの魅力を誇る島がいくつもあるのが特徴です。
そんな中でも特に人気が高いのが、リゾート地として人気の高い石垣島、雄大な自然環境が魅力の西表島などを中心とした島々からなる八重山諸島。
大小32もの島で構成される八重山諸島には、石垣島、竹富島、小浜島、黒島、新城島、西表島、鳩間島、由布島、波照間島、与那国島と10の有人島が含まれています。
東端の石垣島から西端の与那国島までは約120kmも離れており、この距離感から八重山諸島の海域がいかに広大かお分かりいただけるのではないでしょうか。
今回はそんな八重山諸島の中核を成す島の一つ、自然溢れる西表島についてさまざまな情報を見ていきたいと思います。
西表島の地理
では、まず地理の特徴から見ていきましょう。
西表島は島としては非常に大きな面積を有しており、その面積は沖縄本島に次いで県内二番目です。
位置は石垣島の西側で、本土からはなんと400km以上も離れており、沖縄本島よりも台湾の方が遥かに近いという立地です。
このような立地のため、西表島は年間を通して非常に温暖。
本土とは異なり、亜熱帯気候に属しており、冬場でも気温が20℃を上回る日が多々みられます。
春の頃には既に初夏のような気温に達し、3月という早い時期に既に海開きとなる点は特筆すべき特徴だといえるでしょう。
また、梅雨の訪れも早く、本土よりおよそ一ヵ月前倒しで梅雨の時期へと突入し、6月上旬には梅雨が明けます。
亜熱帯気候ということもあって高温多湿で、梅雨時に島全体を覆う暑気は非常にムシムシとしたもの。
また雨の降り方も本土とは異なり、西表島の雨は短時間に強く降ってすぐに止むというスコールのような性質です。
基本的に高温多湿なため、降雨量はかなり多めの土地だといえるでしょう。
もう一つ地理的な特徴として挙げられるのが、強い風が吹く土地だという点です。
というのも西表島は離島ですので、四方を海に囲まれているからです。
特に、島より北側には風を遮る島影などがなく、とりわけ冬場になると気団の影響を受けて強い北風が吹きつけます。
冬場でも気温そのものは温暖な日が多いのですが、この風によって数値よりは体感温度が低めになるという点は知っておくべきでしょう。
さて、そんな亜熱帯気候の環境が生み出しているのが島の最大の個性であり魅力でもある大ジャングル。
なんと広大な西表島の面積のうち、9割以上をこのジャングルが占めているとされています。
このジャングルには稀少な動植物が多数生息していることから、海に面した外周部以外の開拓や開発はあまり行われていません。
沖縄県の島にはサンゴ礁が隆起して生まれた島も多く、そういった島々は山のない平坦な地形となっているのですが、西表島には山や川、さらには滝などが存在しています。
また、火山脈が走っていることもあり、諸島の中で唯一温泉がある点も特殊な点と言えるでしょう。
西表島の人口は2020年時点でおよそ2400人と少し。
島の北西から南にかけて外周をぐるりと東に回るように道路が通されていますが、南西部へと向かう道路はありません。
西表島の自然
上でも触れたように、西表島の大ジャングルにはさまざまな生き物たちが生息しているのが特徴です。
生物相としてはイリオモテヤマネコやカンムリワシ、セマルハコガメなどの国指定天然記念物を多く有しており、学術的にも非常に貴重な場所として知られています。
それ以外にもヤシガニ、ヨナグニウマ、ヤエヤマオオコウモリ、オオゴマダラなどなど多種多様な生物が生息しており、観光資源としても重要な役割を果たしているのです。
さらに動物だけでなく、ジャングルには稀少な植物たちが生育している点も見逃せません。
有名なものでは河口付近に繁茂するマングローブが挙げられます。
沖縄県においては他の島でもマングローブを見ることはできますが、西表島は雨が多く水が豊富なことに加えて大きな川があることから、マングローブの生育に大変適した土地なのです。
特に仲間川流域のマングローブは日本全体のマングローブ面積の約4分の1を占めており、なんと日本のマングローブのうち80%が西表島にあるといわれています。
他にも板のような形状の根を持つサキシマスオウノキ、ジャックと豆の木のモチーフになった日本一大きな豆モダマ、有名なガジュマルなど、とても列挙しきれないほど珍しい植物であふれた島です。
西表島の文化
西表島では独特の文化が根付いており、独自の祭礼があります。
特に興味深いものとして挙げられるのが、島内の古見という地区で行われる豊年祭です。
仮面を着けた神が祭りの時期に訪れて益をもたらすという来訪神という信仰が西表島には根付いており、豊年祭の時期には住民が仮面を被ってアカマタ・クロマタ・シロマタという神に扮します。
これらの三柱の神(アカマタ・クロマタ・シロマタ)が姿を現すのは豊年祭の二日目。
それぞれ名前通りに赤、黒、白の面を着け、全身を草で覆った三柱の神が山から下りてきます。
銅鑼(どら)や太鼓を打ち鳴らし、ユンタという歌を歌って豊年を祈るのです。
この祭りは現地で秘祭として扱われている神聖なものであり、撮影や録音、スケッチなどが禁止されています。
複雑な祭りなので詳細については割愛しますが、西表島の文化の中でもひときわ目を惹くものだといえるでしょう。
また食文化も独特なものであり、カマイやノコギリガザミ、島ダコなどが食べられます。
カマイとはリュウキュウイノシシの方言名であり、豚との混血がなく純度が高い原種のイノシシです。
農作物を荒らす害獣であることから、西表島では積極的な駆除が行われており、「捨てるところは尻尾だけ」と言われるほどカマイを食する文化が根付いています。
言葉通り、その肉のみならず骨や肝、心臓、さらには血に至るまで全てが食用として扱われているのです。
新鮮なイノシシはうまく血抜きを行えばジビエ特有の臭みも出ず、刺身として生でも食されるほど。
ただし、地元の保健所は食中毒の観点から、生食は避けるよう呼びかけていますので注意しましょう。
ノコギリガザミはとても稀少なカニの一種で、汽水域を好んで生息することから西表島ではマングローブ林近辺の川で取られます。
体長が20cmを超えることもある大型のカニで、身がしっかりしており食べ応え抜群。
高級食材として扱われるほどに味も良く、現地では茹で、蒸し、出汁が取れる汁料理などにして多く食べられています。
島ダコは水温が低くなった時期に獲られることが多いタコの1種。
サンゴの間や岩場に隠れており、刺身やカルパッチョといった生食や、天ぷら、煮物などの料理として食されています。
代表的なものを挙げさせていただきましたが、他にも島ならではの食文化は多種多様です。
西表島の多様性の高い環境により、さまざまな食文化が生まれたことがわかりますね。
西表島の産業
西表島は沖縄県の他の土地と同様に、その豊かな自然を軸とした第一次産業と、第三次産業にあたる観光業が特に活発です。
西表島の美しい自然はミシュラングリーンガイドで評価を受けているほど。
また、西表島は世界自然遺産の候補地の一部として日本政府からユネスコへ推薦されており、ジャングル、海、川、滝などすべての自然が観光資源として活用されている点は大きな特徴です。
水辺でのシュノーケリングやダイビング、SUP、カヌーといったウォーターアクティビティや、ジャングルでのトレッキング、キャニオニングなどの現地ツアーが多数組まれています。
島の自然からとれる肉、魚、野菜は最高品質のものばかりであり、亜熱帯気候を活かしたサトウキビ栽培や水稲・果樹栽培・石垣牛畜産・水産漁業などが島の地場産業を支えています。
また、島で栽培されたサトウキビやパイナップルのような南国フルーツなどは、加工食品にも利用されていて、お土産としての需要に応える形で販売が行われている人気の商品です。
総じて、西表島の産業はその自然と共生する形で成り立っているといえるでしょう。
西表島のベストシーズン
とにかく自然が豊富な環境ですので、西表島は四季織々どのシーズンに訪れても楽しむことができますが、その中でもとりわけ観光に適しているシーズンはいつでしょうか。
さまざまな観点があるため、一つをピックアップするのは難しいところですが、あえて絞るのであれば、蒸し暑く湿度の高い梅雨が明けた頃が西表島観光に一番良い時期かもしれません。
一般的には7月や8月がベストシーズンといわれて観光客も多くなりますが、6月はまだシーズン外であることから移動費や宿泊費などの旅費を安く抑えることが出来ます。
コスパという観点で考えるのであれば、6月は比較的穴場にあたるシーズンだと言えるでしょう。
また地理の項目で紹介させていただいたように、5月に始まり6月上旬には終わるのが西表島の梅雨です。
したがって、6月中旬以降になると、梅雨から一転すっかり青空も気温も夏模様で、海水浴から水辺でのアクティビティまで気分爽快に遊ぶことができるはずです。
7月や8月は天気が崩れることなく快晴が続くことから、日本各地から多くの観光客が西表島に訪れます。
この頃は学生の夏休みと被ることから人出が多く、気候という点ではベストな南国旅情を味わえますが、たくさんの観光客で島が溢れかえってしまう点はデメリットと言えるでしょう。
西表島の大自然を味わうことを目的としてきたのに、観光スポットが海水浴場のように人でごったがえしていてはせっかくの旅路にも不自由を感じてしまうことが多いかもしれません。
このような観点から、観光客が多すぎず、ストレスフリーに西表島の夏を堪能することができる6月が総合的にはベストな環境として挙げられます。
ただし注意点として、6月であっても上旬の頃に訪れてしまうと梅雨真っ盛り。
早まらず、しっかり梅雨が明けたことを確認して訪れたいところですね。
さいごに
西表島のさまざまな基本情報についてご紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。
せっかくはるばる西表島への旅行に向かうのであれば、綿密な事前リサーチは不可欠ですね。
西表島のベストシーズンを押さえることで、懐事情とも相談しながら効率よく旅行を楽しむことができるでしょう。
また、畜産や水産などの産業や文化についても知っておけば、よりディープな西表島旅行を味わえること請け合いです。
ぜひ事前知識をお供に、充実した旅行を楽しまれてくださいね!