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COLUMN

沖縄諸島・周辺島世界自然遺産へ

2020-01-26 04:32

【2021/08/10追記】

2021年7月に西表島を含む「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録が正式に決定されました。

 

沖縄諸島・周辺島世界自然遺産へ

西表島 リバーカヤック

ここ数年、西表島を始め、沖縄北部、奄美大島などが世界自然遺産に推薦されており話題です!

本来であれば、2020年の世界遺産委員会で決まることになっていたのですが、新型コロナウィルスなどの理由から、次回の審議は2021年6月とされています。

西表島の90%近くを占めるジャングルは未開拓であり、手つかずの自然が残っています。

そんな自然溢れる西表島が、もうすぐ世界自然遺産になるかもしれません!

この素敵な肩書きが日本にどんどん増えると、西表島民としてももちろん、日本にとっても誇らしい出来事のはずです。

本記事では沖縄諸島、周辺島の世界自然遺産登録への動きについてご紹介します。

 

世界遺産とは

西表島の海とウミガメ

そもそも世界遺産とはなんでしょうか?

外務省のホームページを見ると、「世界遺産条約に基づいて作成される「世界遺産一覧表」に記載されている物件のこと」となっています。

その世界遺産条約とは、文化遺産や自然遺産を人類全体のための遺産として保存していくために、国際的な協力体制をつくろうという条約です。

2019年7月現在、文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件の1121件の世界遺産が登録されています。

そのうち日本は、文化遺産19件、自然遺産4件の23件の登録です。

 

世界遺産には、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類があります。

 

①文化遺産

文化遺産の登録基準はたくさんあるのですが、普遍的価値を高くもつ記念物、建造物群、遺跡、文化的景観などが選ばれるのです。

日本で登録されているのは19件あり、原爆ドームや首里城、京都や奈良の文化財、富岡製糸工場などです。また海外では万里の長城やピラミッド、自由の女神像などがあります。

 

②自然遺産

自然遺産には4つの登録要件があります。詳しくは次のセクションで解説しますね。

自然遺産についての評価は、国際自然保護連合(IUCN)がおこないます。

2020年12月現在、日本で選ばれている自然遺産は「屋久島」「白神山地」「知床」「小笠原諸島」の4ヶ所です。

海外では、イエローストーンの間欠泉や中国四川省のジャイアントパンダ保護区などがあります。

 

③複合遺産

文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているものが、複合遺産です。

登録されているのは、マチュピチュの歴史保護区やタスマニア原生地区、パラオのロックアイランド群と南ラグーンなどです。

 

上記の中から本記事では、自然遺産について解説いたします。

 

世界自然遺産とは

マングローブ川

 

自然遺産は、普遍的な価値のある地形や生物、生息地などが登録されています。

下記の4点が登録条件です。

 

◾️世界自然遺産登録への条件

1.そこにしかない自然現象や類まれな美的価値をもった地域

たとえば、キリマンジャロ国立公園やタスマニア原生地区、ガラパゴス諸島などがこれにあてはまります。

日本の屋久島もこのカテゴリーです。

 

2.生命進化や地形の形成が進行中のものや、地球の歴史の主要な段階にあったことを証明するもの。

このカテゴリーに属するのは、ハワイ火山国立公園やヴィクトリアの滝、イエローストーン国立公園があります。

 

3.陸・海・淡水域などの生態系やそこにすむ動植物の進化など生物的過程を証明するもの。

このカテゴリーにあたるのは、スマトラ熱帯雨林遺産、ナミブ砂漠、グランドキャニオン国立公園などです。

日本では、白神山地、知床、屋久島、小笠原が選ばれています。

 

4.絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性を守るために重要な自然の生息地。

このカテゴリーには、グレートバリアリーフ、タスマニア原生地区、ガラパゴス諸島などがあります。

日本では知床がこのカテゴリーでの登録です。

 

カテゴリーはひとつだけから選ばれるわけではなく、日本では屋久島のように複数のカテゴリーから選ばれている場合もあります。

この4項目全てから選ばれているエリアも多いです。

 

今回日本が申請をしている、「西表島を始め、沖縄北部、奄美大島、徳之島地区」は、条件を十分に満たしうると判断し、環境省も世界自然遺産登録に動いています。

 

自然遺産に登録されている主な場所(国内)

すでにご紹介している通り、「屋久島」「白神山地」「知床」「小笠原諸島」の4箇所。

 

屋久島は、宮之浦岳という高山がある山岳島です。

屋久島の環境は、動植物移行帯にある湿潤気候の高山として、世界的に珍しいものです。

また、年間10,000ミリ降ることもある雨のおかげで、屋久杉などがある特殊な森林となっています。

平成5年の登録にあたっては、「自然遺産としての屋久島の価値は、多くの人たちが暮らしていながら、すぐれた自然が残されていることだ」と高く評価されました。

 

白神山地のブナ原生林は、動植物の多様性や純度の高さで特異な存在です。

ブナを植生とするクマゲラ、ニホンカモシカ、ツキノワグマなどの生態系とリンクしており、今後も継続して監視が必要と評価され、平成5年に登録されました。

 

知床は、季節海氷域の特徴を持ち、海洋生態系と陸上生態系の両者が関係し合う複合生態系の見本となるエリアです。

この貴重な生態系が認められ、平成17年に登録となりました。

 

小笠原諸島は、動植物、海洋生物、天然記念物のどれをとっても、ここでしか見られない固有種の割合が高いエリアです。

また、それらの進化の過程がわかる貴重な証拠が残されていることなどが高く評価され、平成23年に登録となりました。

 

自然遺産に登録されている主な場所(海外)

海外にはもっと多くの自然遺産があります。

代表的なところで、タンザニア連合共和国のキリマンジャロ国立公園やアメリカ合衆国のイエローストーン国立公園があります。

 

キリマンジャロ国立公園は、キリマンジャロ山を中心に広がる753平方キロメートルの国立公園です。

キリマンジャロ山はアフリカ最高峰です。

山頂には氷河があり、そこから溶け出した水が、山の周りの湿地帯や草原を潤しています。

ヘミングウェイも、「キリマンジャロの雪は、世界をすべて合わせたように広く、大きく、高く、信じがたいほど白い」と絶賛しました。

平地ではコーヒーなどの栽培が行われていますが、高くなるにつれ、熱帯雨林や草原、氷河と豊富な生態系を持っています。

 

イエローストーン国立公園はアメリカ合衆国にあり、第一号の登録地です。

そして国立公園としても世界最古です。

また、上記に挙げた登録4要件をすべて満たした登録地でもあります。

地表から湧き上がる間欠泉で有名ですが、温泉や地熱だけでなく、噴火による特異な地形も貴重なものです。

また、グリズリーやバッファロー、狼などの群れが生活していることも、自然遺産として高く評価されました。

 

近年の世界自然遺産登録への動き

今回登録を進めている「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」について見てみましょう。

この地域を候補地としたことについては、ユネスコへの推薦文の中には、多くの固有種や絶滅危惧種がいるこのエリアは、世界的に貴重な地域であること、ここにしかない豊かな中琉球及び南琉球の生物多様性はとても重要、と書かれています。

世界的に稀少な自然環境となっているエリアですので、ぜひ登録されてほしいですね。

ジャングルトレッキング

①沖縄北部について

沖縄北部からは、奇跡の森とも呼ばれるやんばるが登録の候補としてあがっています。

「やんばる」とは山原と書きます。

森が広がっている、沖縄北部一帯の呼び名です。

やんばるのような亜熱帯照葉樹林の森は、世界的に数が少なくなっています。

沖縄北部固有の鳥ヤンバルクイナの名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。

ヤンバルクイナに代表される多くの希少な動植物が生息・生育している地域でもあることから、「奇跡の森」と呼ばれています。

 

②西表島について

西表島のマングローブでカヌー体験

西表島は、「日本のガラパゴス」「最後の秘境」と呼ばれるほどの美しい自然溢れる島です。

広い汽水域にマングローブ林が広がり、海岸や河川沿いの湿地帯に加えて、古見岳をなどが連なる山地には数千年前から続く原生林が広がっています。

西表島には、多様性の高い大自然があります。

さまざまな環境に、イリオモテヤマネコをはじめとする多くの生物が生息していることが、ガラパゴスとも称される所以なのでしょう。

島の90%が未開拓なため、まだ知られていない秘境が広がっていると言われています。

この自然のままの手つかずの姿が残っている点も、登録へ推薦される理由のひとつのようです。

 

③奄美大島・徳之島について

奄美大島と徳之島には、レッドリストに記載がある希少生物が多く生息しています。

レッドリストとは、絶滅の恐れがある野生生物のリストです。

奄美群島は、亜熱帯の森や美しいサンゴに代表される自然豊かな地域です。

そのなかでも、奄美大島と徳之島は、希少種のアマミノクロウサギなどを含む、さまざまな生物が生息しています。

今回、この点が評価され,沖縄島北部、西表島とともに、登録の候補として挙げられています。

 

現在の状況

ジャングル川

世界自然遺産の登録へと推薦されている島々は、自然も生物が豊かで魅力満点でしたね。

西表島沖縄諸島はイリオモテヤマネコやヤンバルクイナ、アマミノクロウサギなど、固有種も多く、地球上でも稀なエリアだと思います。

是非ともこの美しい自然を守っていきたい、という人も多いと思います。

 

ただユネスコの評価は、少し違うところがあります。

じつは、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島エリアは、知床や小笠原諸島と同時期にユネスコに推薦されているものの、いまだ未登録です。

2018年には「登録延期」の勧告も出ており、登録への道のりは遠いイメージがあります。

IUCNの勧告には「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階があるのですが、この勧告は下から2番目です。

そしてこの勧告は、日本では自然遺産に対して初めて出されたものとなりました。

登録延期となった最大の理由は、「完全性」が不足している点でした。

世界遺産となるからには、遺産を保護していくことができる要素がすべて揃っている必要がありました。

その要素のひとつが十分な広さです。

登録エリアのなかでも、沖縄北部は2016年まで米軍北部訓練場があったこともあり、訓練場の返還後の保護体制が不十分と判断されました。

 

また、地元住民の反対運動もマイナス点だったようです。

世界自然遺産に登録されることで観光客が増えてゴミも増え、かえって自然を壊してしまうとの意見がありました。

沖縄県の2018年の調査でも、西表島の住民の4割が「登録が望ましくない」としています。たしかに観光客が多くなることで、ゴミの問題はついて回ります。

富士山の時も、課題のひとつでした。

 

しかし、だからといって、登録を取り下げるのでは、何も解決しません。

今後は、観光客が増えてもゴミ問題が起きないように対策をとることの方が重要です。

ぜひ、世界自然遺産登録し、私たちの大切な自然をみんなで守っていける、そんな環境作りができることを心より祈っています。

 

さいごに

世界遺産、そして沖縄・鹿児島の島々の世界自然遺産登録への動きについてご紹介いたしました。

いかがだったでしょうか?

 

日本にはとても美しい自然・生き物たちが多く存在しますね。

是非とも美しい自然を我々みんなで大切に守っていきたいですね。

そのためにも世界自然遺産登録、観光客の方の意識が上がることを願うばかりです。

ぜひとも、候補地へ足を運び美しい自然を体感していただければと思います。

 

あなたの最高の旅にお役立てればと思います!

最後までお読みいただきありがとうございました。